住宅塗替え部位別の工法説明|金属部
木部や外壁とは異なり、金属部材はサビによる劣化が最大の弱点です。サビは見た目が悪くなるだけでなく、強度低下・穴あき・雨漏り・部材脱落など、住宅の安全性にも直結する非常に重要なポイントです。
そのため、「金属だから強い」と油断していると、実は木部より早く劣化が進んでしまう場合もあります。
本記事では、 住宅に使われる金属部の種類などを、プロ目線で詳しく解説します。
1章 住宅に使用される金属部とは?
住宅には想像以上に「金属部」が多く使われています。外部・内部で主なものを分類すると次の通りです。
【外部の金属部】
外装に使われる金属部は、雨・紫外線・風・温度変化などの影響をもろに受けます。
- 雨戸・戸袋(スチール・アルミ)
- シャッターボックス
- 破風板の金属巻き
- 軒樋金具
- 屋根板金(棟板金・雪止め金具)
- 玄関ドア(スチール)
- 門扉・フェンス(アルミ・スチール)
- 外階段の鉄骨
- ベランダ鉄骨
- 水切り板金
- 配管カバー・ダクトカバー
- 波板の金属枠
【内部の金属部】
内部はサビではなく“汚れ・傷・塗膜劣化”が主となります。
- 室内扉枠の金属部分
- 階段手すりの金属
- 換気口の金属フレーム
- 室内側の金属サッシ
内部は外部ほど深刻な劣化は起こりませんが、塗装工程は外部とほぼ同じです。
2章 金属部の劣化症状
金属部は劣化が視覚的に分かりやすく、早めの対処が必要です。
●サビ・腐食
最も多い劣化です。赤サビ → 茶サビ → 黒サビ → 穴あき と進行し、放置するほど補修費が倍増します。
●塗膜剥離
古い塗膜がめくれてくる状態。剥がれた部分からサビが急速に拡大します。
●チョーキング(白い粉)
紫外線で塗膜が分解されているサイン。
●色あせ
美観が損なわれるだけでなく、保護力も落ちています。
●へこみ・変形
雨戸・戸袋・シャッターボックスなどに多い。軽微であれば補修、ひどい場合は交換が必要。
3章 金属部塗装が必要な理由
木部や外壁以上に「塗膜の役割」が重要です。
✔ サビの発生を防ぐ
塗膜がサビの進行を止め、金属の寿命を伸ばします。
✔ 雨水・湿気から保護
金属は水分と反応して腐食するため、塗装で防水性が必要。
✔ 美観の維持
サビた部分は老朽化した印象を与え、住宅価値を下げます。
✔ 強度低下の防止
金属が腐食すると穴あき・破損につながり、落下事故や雨漏りの原因にもなります。
4章 金属部に使用される塗料
金属部には主に「下塗り(サビ止め)」が最重要です。金属部の塗装は、下塗りの良し悪しで耐久性が80%決まるとも言われます。
●エポキシ系サビ止め(最も一般的)
密着性が高く、金属との相性が非常に良い。外部の金属部では必須。
●変性エポキシサビ止め(密着力強化タイプ)
古い金属やサビの進行がある部分に使用。
●シリコン塗料(中・上塗り)
耐久性・価格のバランスが良い。多くの住宅で使われる標準グレード。
●フッ素塗料(高耐候)
紫外線に強く、耐久性は最上級。シャッターボックス・破風板などに人気。
●ウレタン塗料
柔軟性が高く、シャッターのような可動部に向いている。
●耐熱塗料(鉄骨階段・ボイラー周辺)
高温になる部分に使用。
●アルミ専用塗料
アルミ製雨戸・戸袋には専用プライマーが必須。アルミは塗料が密着しにくいため、誤った塗料選びは剥がれの原因。
5章 金属部塗装の基本工法(共通工程)
金属部の塗装は「下地処理」が命です。どれだけ上塗りが高級でも、下地が不完全ならすぐ剥がれます。
① ケレン作業(最重要工程)
● サビ落とし
● 既存塗膜の剥がれ除去
● 表面に目荒らしを行い密着力を向上
仕上がりに大きく差が出るため、時間をかけて入念に行います。
② 洗浄・油分除去
金属には油分が付着していることが多いので、
● シンナー拭き
● 高圧洗浄
などで清潔にします。
③ 下塗り(サビ止め塗布)
金属塗装の心臓部。エポキシ系サビ止めを丁寧に塗装します。
④ 中塗り・上塗り
仕上げ塗料を2回塗りすることで、耐久性・光沢・色の安定性が向上します。
⑤ 乾燥・仕上げ確認
塗膜厚・塗りムラ・剥離箇所を確認して完成。
6章 部位別の金属部塗装工法(詳細)
住宅には部位ごとに状態や施工方法が異なります。
●雨戸・戸袋
・へこみ・サビが出やすい
・アルミ製の場合は密着が弱いため専用塗料が必要
工法
① ケレン
② 洗浄
③ 下塗り(サビ止め or アルミ用プライマー)
④ 中・上塗り
●シャッターボックス
外壁塗装の際に必ず施工する部位。
・動く部分(シャッター本体)は塗装NG
・ボックスのみ塗装
工法
① ケレン
② サビ止め
③ 中・上塗り
●屋根板金(棟板金・水切り)
台風被害が多く、劣化しやすい重要部位。
ポイント
・ビスの浮きは交換
・コーキングで固定
・板金のサビ予防は必須
●鉄骨階段・手すり
サビが進むと穴があき、落下事故の恐れがあります。
工法
① 3種〜2種ケレン(重度サビ)
② 防錆プライマー
③ 中・上塗り
●ベランダ鉄骨
風雨にさらされ最もサビが進む部位のひとつ。
穴あき → 溶接補修
サビ層が厚い → 電動工具でケレンが必須
●水切り板金
建物の雨仕舞いで重要な部分。劣化すると雨漏りに直結するため、塗装により防水機能を維持します。
●配管カバー・室外機ホースカバー
意外と劣化が早く、剥がれが目立ちやすい部位。
7章 金属部塗装の耐久性・メンテナンス周期
| 塗料 | 耐久年数 |
|---|---|
| ウレタン | 5〜7年 |
| シリコン | 7〜12年 |
| フッ素 | 12〜18年 |
| 無機 | 15〜20年以上 |
金属部は木部より長持ち、外壁より短命という特徴があります。
8章 金属部塗装の注意点
✔ サビが進行している場合は塗装だけでは改善しない
穴があいている場合は補修(溶接・板金交換)が必要。
✔ アルミは「塗れる金属」と「塗りにくい金属」
アルミは塗料が密着しにくいため、
● 酸化皮膜の除去
● アルミ専用プライマー
が必須。
✔ シャッターの本体は基本塗装NG
動作不良の原因になるため、ボックスのみ塗装。
✔ ケレン不足はすべてを台無しにする
金属塗装の最大の失敗原因は“下地処理不足”。
✔ 雨の日の塗装はNG
湿気が多いとサビ止め塗料が乾きにくく、剥離の原因に。
9章 金属部塗装の費用相場
| 部位 | 単価(目安) |
|---|---|
| 雨戸・戸袋 | 3,000〜6,000円/枚 |
| シャッターボックス | 5,000〜15,000円 |
| 鉄骨階段 | 30,000〜120,000円 |
| 水切り板金 | 800〜1,500円/m |
| ベランダ鉄骨 | 20,000〜80,000円 |
| 配管カバー | 3,000〜10,000円 |
10章 まとめ:金属部塗装は“早めの対処”が命
金属は劣化すると短期間で状態が悪化し、最終的には交換が必要になることもあります。
だからこそ、
● 早期の発見
● 正しい下地処理
● 専用塗料の選定
● 安定した施工技術
がとても重要です。
金属部の塗装は外壁塗装とセットで行うのが最も効率的で、費用対効果も高くなります。
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