住宅塗替え部位別の工法説明|木部

住宅塗替え部位別の工法説明|木部
目 次

    住宅の外装・内装に使用される「木部」は、住まいの印象を大きく左右するだけでなく、耐久性や安全性にも深く関わる重要な部位です。

    木は自然素材であり、金属やコンクリートとは違い、湿気・紫外線・雨水・カビ・虫害などにより日々劣化します。そのため、適切なタイミングでの塗装・保護処理が必要不可欠です。

    本記事では、
    ● 木部の種類
    ● 劣化症状
    ● 使用される塗料の種類と特徴
    ● 木部専用の工法
    ● 部位ごとの施工ポイント
    ● メンテナンスの重要性
    などを、プロ目線で徹底解説します。

    目次

    1章 木部とはなにか?住宅に使われる「木」の特徴

    住宅に使われる木材は大きく分けて2種類あります。

    ■ 構造材(家を支える木)

    ・柱
    ・梁
    ・土台

    これは基本的に表面を塗装しないため、今回の対象は非構造材(仕上げ材)です。

    2章 住宅で塗り替えが必要となる木部の代表例

    木部は家の内外すべてに使われています。

    【外部木部】

    • 破風板・鼻隠し
    • 軒天の一部(木製の場合)
    • 窓枠(木製サッシ)
    • バルコニー手すり・笠木
    • ウッドデッキ
    • 木製フェンス
    • 面格子
    • 玄関ドア(木製)
    • ベランダや外階段の木製部材

    外部木部は、紫外線と雨により最も劣化が早い部位です。

    【内部木部】

    • 戸枠・窓枠
    • フローリング
    • 階段
    • 巾木・廻り縁
    • カウンター
    • 木製ドア

    内部木部は外部ほど劣化しませんが、乾燥・湿気・擦れ・汚れなどで塗膜が摩耗します。

    3章 木部が受ける劣化の特徴

    木材は“生きている素材”といわれ、環境に敏感です。以下のようにさまざまな劣化症状が出ます。

    ●日焼け・色あせ

    紫外線により表面のリグニンが分解され、黄色→灰色→黒色へと変色していきます。

    ●腐朽(腐り)

    水を含むことで腐朽菌が繁殖し、木材がボロボロに崩れます。放置すると構造的な強度が一気に低下します。

    ●割れ・反り・ひび

    木は吸水と乾燥を繰り返すことで伸縮し、割れや反りが発生します。

    ●カビ・藻・コケ

    表面が湿った状態が続くと、カビが発生し黒ずみます。

    ●虫害(シロアリ・キクイムシ)

    外部の木部では特に注意が必要です。

    4章 木部塗装が必要な理由

    ✔ 木材を保護する

    塗膜を形成することで、紫外線・雨水から木を守ります。

    ✔ 腐り(腐朽)の防止

    防腐剤入りの塗料を使用すれば、腐りを大幅に抑制できます。

    ✔ カビ・藻の発生を抑える

    防カビ性のある塗料なら、黒ずみを防止できます。

    ✔ 美観を維持する

    木目を生かした自然な仕上がりにも、しっかり色のついた仕上がりにもできます。

    ✔ 長寿命化につながる

    木部は塗装を怠ると数年でボロボロになりますが、定期的な塗装で寿命を大きく延ばせます。

    5章 木部塗装に使用される塗料の種類

    木材専用の塗料は大きく2タイプに分かれます。

    ●浸透型塗料(ステイン系)

    木に浸透して着色する塗料で、塗膜として表面に厚く残らないタイプ。

    特徴

    ✔ 木目が生かせる
    ✔ 塗膜が割れにくい
    ✔ メンテナンスがしやすい
    ✔ 自然な風合い

    デメリット

    ✖ 耐久年数が短め(約2〜5年)
    ✖ 色の均一性が弱く、施工技術が必要

    ウッドデッキ・木製フェンスなどに多く採用されます。

    ●造膜型塗料(ペンキ系)

    木の表面に膜を形成するタイプ。

    特徴

    ✔ 耐久性が高い
    ✔ 色がはっきりしている
    ✔ 汚れに強い
    ✔ 木材の保護効果が高い

    デメリット

    ✖ 割れが発生する可能性
    ✖ 木目は見えなくなる

    破風板・窓枠・屋外木部によく使われます。

    6章 木部塗装の工法(基本工程)

    木部塗装は他の部位よりも「下地処理」が非常に重要です。どの部位でも共通する基本工程は以下の通りです。

    ① 洗浄・清掃

    汚れ・カビ・古い塗膜を除去。

    ② ケレン(研磨)

    木材の表面を整える最重要作業。

    ● サンドペーパー
    ● 電動サンダー
    ● ワイヤーブラシ

    などで、表面の荒れ・剥がれを削り落とします。

    ③ 乾燥

    木材は塗装前に必ず乾燥させる必要があります。水分が残っていると、剥離や腐朽に繋がります。

    ④ 下塗り(プライマー・防腐剤)

    木材の吸い込みを抑え、密着性を高める工程。内容は木材の種類によって異なります。

    ⑤ 中塗り・上塗り

    造膜型塗料なら2回塗りが基本。浸透型塗料は2〜3回重ね塗りして色ムラを整えます。

    ⑥ 防腐・防虫処理

    ウッドデッキ・外部の手すりなどは特に重要。

    7章 部位別の木部塗装工法(詳細解説)

    木部は部位ごとに状態も塗装方法も異なります。以下では住宅でよくある部位を詳しく説明します。

    ●破風板・鼻隠し

    住宅の中でもっとも紫外線を受ける部位。劣化が早いため造膜型塗料が一般的です。

    工法

    ① 下地ケレン
    ② 腐朽部の補修(パテ・差し替え)
    ③ 下塗り(木部用プライマー)
    ④ 中塗り
    ⑤ 上塗り

    ●軒天(木製)

    湿気がこもりやすく、カビが出やすい部位。

    ● 防カビ性塗料
    ● 透湿性塗料

    が推奨されます。

    ●木製ドア・玄関ドア

    玄関ドアはデザイン性が高く、木目を活かす施工が多い。ステイン仕上げが人気。

    工法

    ・古い塗膜をすべて剥離
    ・サンディングで木目を際立たせる
    ・浸透型塗料を2〜3回塗り
    ・トップコートで保護(クリヤー仕上げ)

    ●ウッドデッキ・フェンス

    木部の中でも劣化スピードがもっとも早い部類。陽と雨が直接当たるため、毎年点検が必要。浸透型塗料が一般的です。

    ●木製窓枠・面格子

    雨水が直接当たるので腐食が早い。ケレン〜造膜型塗料で耐久性を高める施工が主流。

    ●室内木部(建具・枠・階段など)

    室内は安全性が最優先。F☆☆☆☆塗料を使用し、臭いの少ない水性塗料が主流。

    8章 木部塗装の耐久性とメンテナンス周期

    木部のメンテナンス周期は塗料によって異なります。

    塗料の種類耐久年数
    浸透型塗料2〜5年
    水性ウレタン5〜7年
    シリコン塗料7〜10年
    フッ素塗料10〜15年

    9章 木部塗装の注意点と失敗しないポイント

    ✔ 下地の乾燥が不十分だと剥がれる

    木部塗装において最も多い失敗。

    ✔ 木の動きを理解していない施工

    木材は生きている素材なので膨張・収縮があります。それに対応した塗料選びが重要。

    ✔ 腐朽部分を塗装で隠すのはNG

    腐った木は塗っても元に戻りません。交換または補修が必要。

    ✔ 室内は安全性の高い塗料を使用

    VOC(揮発性有機化合物)が少ない塗料が必須。

    ✔ 外部木部は定期点検が必要

    ウッドデッキ・破風板は特に劣化が早い。

    10章 木部塗装の費用相場(目安)

    部位単価
    ウッドデッキ1,500〜3,000円/㎡
    木製フェンス1,200〜2,500円/㎡
    破風板・鼻隠し1,500〜3,000円/m
    木製玄関ドア30,000〜80,000円
    室内木部(枠)5,000〜15,000円

    11章 木部塗装のまとめ

    木部は、住宅の中で「もっとも繊細で、もっとも個性を出せる素材」です。
    しかしその反面、劣化スピードが速く、メンテナンスを怠ると寿命が極端に短くなる特徴があります。

    だからこそ、
    ● 木部の性質に合わせた塗料選び
    ● 適切な下地処理
    ● 正しい工程管理
    が非常に重要です。

    木材の風合いを活かしつつ、長持ちさせるためには専門業者による診断と適切な工事が不可欠です。

    後悔のないリフォームを実現するためには、以下のポイントを押さえて業者を選ぶことが重要です。

    • 中間マージンのかからない、職人直営の自社施工会社を選ぶ。
    • 地域に根ざし、その土地の気候や特性を熟知している会社を選ぶ。
    • 建物の状態を正確に診断し、最適なプランを提案できる専門知識を持った会社を選ぶ。

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