工場・倉庫で用いられる屋根材の種類と耐久性

factory-roofing-material

工場・倉庫で用いられる屋根材の種類と耐久性

工場・倉庫で用いられる屋根材の種類と耐久性
目 次

    日本の高度経済成長期に建設された多くの工場や倉庫が、築30年、40年という大規模修繕の時期を迎えています。
    特に屋根は、雨風や紫外線に常に晒され、建物のなかで最も過酷な環境にある部分です。
    屋根の劣化は、雨漏りによる製品や設備への被害だけでなく、従業員の労働環境の悪化、ひいては企業の資産価値そのものを大きく毀損するリスクに直結します。

    適切なタイミングで最適な改修を行うためには、まず「自社の屋根が、どの種類の屋根材で、どのような状態にあるのか」を正確に把握することが不可欠です。
    このページでは、工場・倉庫で主に使用される3種類の屋根材について、その構造、注意点、耐久性を専門家の視点から徹底的に解説します。


    1. 波形(なみがた)スレート屋根

    セメントを主成分とする波状の屋根材で、経済性と施工のしやすさから、高度経済成長期に建てられた工場・倉庫で最も広く普及しています。

    特徴と構造

    鉄骨の母屋(もや)の上に直接設置し、「フックボルト」というJ字型の金具で固定するシンプルな構造です。波の高さによって、主に屋根に使われる排水性の高い「大波スレート」と、壁などに使われる「小波スレート」に分けられます。

    ⚠️ 最大の注意点:アスベスト含有と踏み抜き事故

    波形スレート屋根には、経営者・ご担当者様が必ず知っておくべき2つの重大なリスクがあります。

    • ① アスベスト(石綿)含有のリスク
      2004年以前に製造された波形スレートには、強度を高めるためにアスベストがほぼ確実に含まれています。 アスベスト含有建材の改修工事は、法律で厳しく規制されており、2023年10月からは有資格者による事前調査が義務化されました。違反した場合、発注者であるお客様側も罰せられる「両罰規定」が適用されます。 私たちトラストホームの診断スタッフは、全員が「建築物石綿含有建材調査者」の有資格者です。 法令を遵守し、安全を徹底した調査・施工計画をご提案しますのでご安心ください。
    • ② 踏み抜きによる転落事故のリスク
      経年劣化した波形スレートは、人が乗っただけで簡単に割れてしまうほど強度が低下しています。実際に、毎年全国で発生する建設現場の転落死亡事故の多くが、この波形スレートの踏み抜きによるものです。 専門家による適切な安全対策なしに、絶対に屋根の上にはのぼらないでください。

    耐久性と主な改修方法

    • 耐久年数(目安): 30年~40年
    • 主な改修方法: 塗装による延命効果は限定的です。アスベストの飛散リスクがなく、安全かつ経済的に施工できる「カバー工法」が最も一般的な選択肢となります。

    関連記事

    2. 折板(せっぱん)屋根

    鋼板を山型(富士山型)に折り曲げて強度を高めた金属製の屋根材で、現在の工場・倉庫の屋根の主流です。

    特徴と構造

    鉄骨の母屋に「タイトフレーム」という専用の下地金具を溶接し、その上に折板屋根材をボルトで固定します。雨漏りリスクを最小限にするため、現場で成形して継ぎ目のない一枚物として施工する「長尺屋根」が基本です。

    ⚠️ 最大の注意点:夏場の暑さと結露

    金属であるため熱を伝えやすく、対策をしないと夏場は屋根からの輻射熱で室内が酷暑となり、作業環境の悪化や空調コストの増大に繋がります。また、冬場は結露が発生しやすくなります。 対策として、屋根材の裏に薄い断熱シート「ペフ」を貼り付ける方法や、屋根を二重にして間にグラスウールなどの断熱材を敷き詰める「インシュレーション工法」などがあります。

    💡トラストホームのプロ視点

    断熱対策は、生産性を向上させる投資です 私たちトラストホームは、折板屋根のカバー工法を行う際、断熱材を付加する施工を強く推奨しています。初期費用は上乗せになりますが、夏場の労働環境改善による生産性向上と、空調コスト削減によるランニングコストの低減を考えれば、十分に回収可能な「戦略的投資」と言えます。

    耐久性と主な改修方法

    • 耐久年数(目安): 30年~40年(ガルバリウム鋼板の場合)
    • 主な改修方法: 錆の発生を防ぎ、寿命を延ばすための「(遮熱)塗装」が有効です。全体的な劣化が進んだ場合は、既存の屋根の上に新しい折板屋根を重ねる「カバー工法」が一般的です。


    3. 立平(たてひら)葺き

    折板屋根より凹凸が少なく、フラットでシンプルな見た目の縦葺きの金属屋根です。

    特徴と構造

    折板屋根より薄い鋼板(0.35mm~0.4mm)を使い、タイトフレームは使用せず、野地板などの下地の上に直接施工します。強度の面から、大規模な建物ではなく、中小規模の施設や倉庫で採用されることが多いです。

    ⚠️ 注意点:下地の状態確認が不可欠

    カバー工法も可能ですが、立平葺きは比較的撤去が容易です。下地の状態を確認し、必要であれば補修できるメリットが大きいため、安易にカバー工法を選ぶのではなく、一度屋根材を剥がす「葺き替え(張り替え)」工事も有力な選択肢となります。

    耐久性と主な改修方法

    • 耐久年数(目安): 約30年
    • 主な改修方法: 下地の状態によって「葺き替え」または「カバー工法」を判断します。定期的な「塗装」も有効です。
    関連記事

    4. 工場・倉庫の屋根の改修方法|3つの選択肢を徹底比較

    自社の屋根材の種類と状態を把握した上で、次はお客様の事業計画、ご予算、そして建物の将来を見据えて、最適な改修方法を選択します。主な選択肢は「カバー工法」「葺き替え」「塗装」の3つです。

    【全体比較】どの改修方法を選ぶべきか?

    改修方法コスト工期期待寿命最適な屋根の状態
    ① カバー工法〇(中)〇(短い)◎(長い)劣化が軽度~中程度。アスベスト対策をしたい。
    ② 遮熱塗装◎(低い)◎(非常に短い)△(短い)劣化が軽微な金属屋根。錆対策と省エネを両立したい。
    ③ 葺き替え△(高い)△(長い)◎(最も長い)劣化が激しく、下地の補修が必須。

    💡トラストホームのプロ視点

    コスト、工期、そして事業への影響を総合的に判断すると、ほとんどの場合において「カバー工法」が最もバランスの取れた、現実的な第一選択肢となります。劣化が軽微な金属屋根であれば、「遮熱塗装」は非常に費用対効果の高い戦略的なメンテナンスと言えます。「葺き替え」は、下地の腐食などが深刻な場合の最終手段と考えるのが賢明です。

    ①【最も推奨】屋根カバー工法(重ね葺き)

    既存の古い屋根を撤去せず、その上から新しい防水シートと軽量な金属屋根(主に折板屋根)を重ねて施工する方法です。

    • 最大のメリット:事業を止めずに、安全かつ経済的に屋根を再生
      • 操業を止めない: 既存屋根を剥がさないため、粉塵やアスベストが室内に飛散するリスクが極めて低く、工場の稼働や倉庫の営業を継続したまま工事が可能です。
      • コスト削減: 解体費用やアスベストを含む廃材の処分費用が不要なため、葺き替えに比べてコストを大幅に削減できます。
      • 工期短縮: 撤去作業がない分、工期を短縮できます。(例:200㎡で約2週間)
      • 機能性向上: 屋根が二重構造になることで、断熱性・遮音性が向上します。特に断熱材を充填する工法を併用すれば、夏場の労働環境改善と光熱費削減に絶大な効果を発揮します。

    【カバー工法が可能な組み合わせ例】

    既存の屋根重ねる新しい屋根主な使用屋根材
    波形スレート折板屋根ガルバリウム鋼板 0.5mm~
    折板屋根折板屋根ガルバリウム鋼板 0.6mm~

    ②【戦略的メンテナンス】屋根塗装

    屋根の塗装は、既存の屋根材が「波形スレート」か「金属屋根(折板屋根など)」かによって、その価値と目的が全く異なります。

    • 波形スレート屋根への塗装は【非推奨】
      • 理由① 効果が限定的
        塗装で美観は回復しますが、素材自体の劣化や脆さは改善されません。短期的な延命にしかならず、費用対効果が極めて低いのが現実です。
      • 理由② 非常に危険
        劣化したスレート屋根の上での塗装作業は、踏み抜きによる転落リスクが非常に高く、命に関わる危険を伴います。安全管理の観点から、私たちを含め、塗装を引き受けない専門業者も多いです。
    • 金属屋根(折板屋根)への塗装は【推奨】
      • 目的錆の発生を防ぎ、屋根の寿命を延ばす
        金属屋根の最大の敵は「錆」です。高圧洗浄などの適切な下地処理を行った上で定期的に塗装メンテナンスを行うことで、腐食を防ぎ、良好な状態を長期間維持できます。
      • トラストホームの付加価値提案 → 「遮熱塗装」
        私たちは、ただの塗り替えは行いません。太陽光を効率よく反射する「遮熱塗料」を用いることで、屋根の保護に加えて「夏場の室内温度低下」「空調コストの大幅削減」「労働環境の改善」という大きな付加価値をご提供します。これは、企業の収益性と従業員満足度に直結する、まさに「戦略的投資」です。

    ③【最終手段】屋根葺き替え(張り替え)

    既存の屋根材をすべて撤去・処分し、下地から新しい金属屋根に交換する工法です。

    • メリット
      • 下地の鉄骨の状態を確認し、補修できる唯一の方法。
      • 雨漏りの原因を根本から解決し、建物の資産価値を最大化できる。
    • デメリットとリスク
      • 高額な費用: 解体・処分費用がかかるため、カバー工法に比べて非常に高額になります。
      • 事業への影響: 屋根を解体するため、天候によっては雨水が浸入したり、粉塵(アスベストを含む)が室内に落下したりするリスクがあり、操業を一時的に停止する必要が出てくる可能性があります。厳重な養生と、綿密な工程管理が不可欠です。

    💡トラストホームのプロ視点

    葺き替え工事は、下地の腐食が深刻でカバー工法が適用できない場合や、アスベストを完全に撤去したいといった特別な事情がある場合に限定して検討すべき最終手段です。その判断には、高度な専門知識と正確な診断が求められます。

    5.工場・倉庫の屋根カバー工法の費用

    工場・倉庫の屋根改修で最も推奨される「カバー工法」。
    その費用は、建物の規模や形状、そして求める性能によって変動します。
    ここでは、費用の目安と価格が決まる要因、そして具体的な見積り例を解説します。

    費用の目安と価格が決まる6つの要因

    屋根カバー工法の費用は、1㎡あたり10,000円~16,000円が一般的な相場です。
    規模が大きいほど、1㎡あたりの単価は割安になる傾向があります。

    【価格を左右する主な要因】

    要因詳細
    屋根面積面積が小さいほど、1㎡あたりの単価は割高になります。
    屋根形状屋根の面数が多い、形状が複雑な場合、板金の加工作業が増え費用が高くなります。
    周囲の環境クレーン車や資材の搬入が困難な場所、電線などの障害物が多い現場では、追加の費用が発生します。
    鋼板の厚み使用する折板屋根の鋼板が厚いほど、耐久性が増すと同時に費用も高くなります。
    断熱性能断熱材を充填する、遮熱性能の高い材料を選ぶなど、付加価値を高めるほど費用は上がります。
    耐風性能台風対策として固定金具を強化するなど、安全性能を高めるほど費用は上がります。

    規模別の費用相場(1㎡あたり)

    小規模施設(~200㎡)中規模施設(200㎡~1,000㎡)
    既存が波形スレートの場合12,000円~15,000円/㎡10,000円~13,000円/㎡
    既存が折板屋根の場合13,000円~16,000円/㎡11,000円~15,000円/㎡

    詳細見積りサンプル(300㎡の波形スレート屋根をカバー工法で改修した場合)

    大項目工事項目の内容金額(税別)
    仮設・安全対策落下防止ネット設置、クレーン楊重費など440,000円
    既存部処理既存フックボルト切断、既存雨樋撤去処分など160,000円
    屋根工事折板屋根本体(GL鋼板 t0.5mm)1,500,000円
    タイトフレーム(下地金具)設置275,000円
    棟・ケラバ等 板金部材 加工取付120,000円
    雨樋工事大型雨樋(軒樋・竪樋)交換一式390,000円
    オプション工事断熱材(ポリフォーム)充填120,000円
    耐風性能強化(棟下地、タイトフレーム強化など)165,000円
    諸経費現場管理費、廃材処分費など150,000円
    小計3,320,000円
    消費税(10%)332,000円
    合計金額(参考)3,652,000円(税込)

    ※上記はあくまで一例です。建物の状態やお客様のご要望に応じて、最適なプランと正確なお見積りをご提示します。


    💡トラストホームのプロ視点

    工場・倉庫の屋根改修は、戸建て住宅とは異なる視点が不可欠です。
    トラストホームが重視するのは、【排水能力】【防災性能】【省エネ効果】です。
    まず、広大な屋根の雨水を確実に処理するため、【大規模建築物専用の大型雨樋】を選定することが必須です。次に、台風による屋根材の飛散を防ぐため、立地条件を考慮した【耐風性能を高める施工】を計画段階から標準仕様とします。最後に、断熱材の充填や遮熱塗装は、単なる修繕ではなく、従業員の【労働環境改善】と【光熱費削減】に直結する費用対効果の高い【戦略的投資】と考え、積極的にご提案します。
    私たちは、これら大規模建築物特有の課題を踏まえ、お客様の事業に貢献する最適な改修プランをご提案します。

    私たちトラストホームは、お客様の建物の状態とご予算、そして事業計画を深く理解し、長期的な視点で最も価値のある改修工事をご提案します。


    6. 失敗しない工事業者の選び方|3つの絶対条件

    大切な資産である工場・倉庫の改修は、業者選びで成否の9割が決まります。
    以下のポイントを必ず確認してください。

    条件①専門工事会社(建築板金工事会社)へ直接依頼する

    建設会社や不動産管理会社に依頼しても、実際の工事は私たちのような「建築板金工事会社」が下請けとして行います。その場合、お客様の費用には不要な中間マージンが上乗せされてしまいます。 コストを抑え、専門家と直接やり取りするためにも、最初から専門工事会社へ相談することが最も賢明です。

    条件②安全と法令遵守への意識が高い

    • 安全対策の徹底: 足場や安全ネットの設置を省略するような業者は、安全意識が低く、絶対に選んではいけません。
    • 法令知識の有無: アスベスト関連法や、建物の規模に応じた消防法、建設業許可など、法令を正しく理解し、遵守しているかを確認しましょう。

    条件③相見積もりを取得し、提案力を比較する

    必ず2社以上から見積もりを取り、価格だけでなく、なぜその工法や材料を提案するのか、専門家としての提案力を比較検討しましょう。安さだけを追求すると、手抜き工事に繋がるリスクが高まります。

    工場倉庫屋根の状態、ご予算に応じた
    適切な工事をご提案いたします。
    福岡で外装についてお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。
    フリーダイヤル:0120-52-1124 年中無休(9:00-19:00)
    ✉️ お問い合わせ・無料診断のお申し込みはこちら (24時間受付)


    7. コスト負担を軽減する制度活用

    改修費用は大きな負担ですが、活用できる制度もあります。

    • 火災保険の利用
      台風や強風、雹(ひょう)などの「風災」によって屋根が破損した場合、ご加入中の火災保険が適用できる可能性があります。申請には専門的な知識が必要ですので、私たちにご相談ください。
    • 補助金の利用
      国や自治体が、中小企業の設備投資事業継続計画(BCP)対策を支援するための補助金制度を設けている場合があります。申請手続きは煩雑ですが、活用できればコスト負担を大きく軽減できます。
    関連記事

    8. 工場・倉庫の屋根工事でよくあるご質問(FAQ)

    カバー工法で、建物の重さは大丈夫?耐震性に影響は?

    主流の金属屋根材は非常に軽量なため、カバー工法による重量増は比較的軽微で、建物の構造計算上、耐震性に与える影響はほとんどありません。ご安心ください。

    建築確認申請は必要ですか?

    基本的に、既存の屋根に重ねるカバー工法では建築確認申請は不要です。ただし、防火地域・準防火地域の場合は、使用する屋根材に耐火性能などが求められるため、専門家による確認が必要です。

    工場の稼働になるべく影響させたくない。夜間や休日の工事は可能?

    はい、可能です。私たちはお客様の事業への影響を最小限に抑えることを最優先します。操業スケジュールに合わせ、土日祝日や夜間に足場組立や資材搬入を行うなど、柔軟な工程計画をご提案しますので、ご相談ください。

    工期はどのくらいかかりますか?

    建物の規模によりますが、小中規模施設(~1,000㎡)で約2週間~1ヶ月が目安です。材料手配や図面作成に2週間ほど要するため、ご相談から着工までは1ヶ月程度の期間を見ていただくのが一般的です。


    まとめ:工場の屋根改修は、企業の未来への「戦略的投資」

    屋根のメンテナンスは、単なる修繕費用ではありません。
    従業員の安全確保、光熱費の削減による収益改善、生産性の向上、そして企業の資産価値維持に繋がる、極めて重要な「戦略的投資」です。
    私たちトラストホームは、目先の修理だけでなく、その先にあるお客様の事業の未来まで見据え、福岡の地で責任を持ってサポートいたします。

    「まずはうちの工場の状態を正確に知りたい」
    「事業計画に合わせた改修プランを相談したい」

    そう思われましたら、ぜひ無料の建物診断をご利用ください。
    専門家が客観的なレポートを作成し、貴社の資産管理と経営判断にお役立ていただける情報をご提供します。